本書(*)は、ルネ・デカルトが自らの人生経験を振り返りつつ、理性を正しく導くための方法を提示した哲学的エッセイです。全六部に分かれ、学問に対する批判から始まり、独自の方法論、暫定的な道徳律、神と魂の存在証明、自然科学的探究、そして未来の学問への展望へと展開していきます。核心は「確実な知識を得るためには、疑わしいものを一旦すべて棄却する」姿勢であり、そこから有名な「我思う、ゆえに我あり」という真理が導かれます。さらに、四つの規則（明証性・分析・総合・完全性）を用いて思考を整理する方法が提示され、人間の理性が正しく用いられるなら、真理に到達できるという信念が貫かれています。本書は単なる哲学論文ではなく、自己探求と学問方法論の実践的ガイドとして読むことができ、近代思想の出発点として大きな影響を与えた名著です。
ルネ・デカルト（1596–1650）は、フランスの哲学者・数学者・自然科学者であり、近代哲学の祖と呼ばれる人物です。若くしてイエズス会の学校で学び、伝統的な学問体系に疑問を抱きます。その後、各地を旅しながら軍務や社交生活を経験し、人間の習慣や思想の多様さを観察しました。やがて「確実な知識の基盤」を探究することを使命とし、数学的な明晰さをモデルにした新しい方法論を構築します。デカルトの思索は「普遍的懐疑」から出発し、そこから「我思う、ゆえに我あり」という確実な真理を発見しました。また、解析幾何学の創始者でもあり、哲学と数学を架橋した先駆的存在です。生涯の多くをオランダで過ごしましたが、晩年はスウェーデン女王クリスティーナの招きでストックホルムに赴き、厳しい寒さの中で病に倒れ、54歳で亡くなりました。その思想は後世に大きな影響を与え、理性を信じる近代精神の象徴となっています。
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