本書(*)は、フッサールが「時間とは何か」という根源的な問いに挑んだ重要な著作(1904年)です。私たちは時計の時間ではなく、「いま聴いている音楽」や「いま思い出している過去」のように、流れとして時間を体験しています。本書では、その“体験される時間”の仕組みを丁寧に分析します。
フッサールは、時間を「今この瞬間」だけでなく、「たった今過ぎ去ったもの(保持)」と「これから起こると予期されるもの(予持)」が重なり合う構造として捉えました。たとえばメロディーが一つの旋律として聴こえるのは、この三層構造が働いているからだと説明します。
時間は外から与えられるものではなく、意識そのものの働きによって構成される――これが本書の核心です。難解でありながら、人間の体験の根を照らす力強い思想が展開されています。
エトムント・フッサール(1859–1938)は、ドイツの哲学者で、現象学という哲学の方法を創始した人物です。数学を学んだ後、「私たちは世界をどのように意識しているのか」という根本問題に取り組みました。先入観をいったん脇に置き、体験そのものを丁寧に見つめ直す姿勢を重視します。彼の思想はハイデガーやサルトルなど後世の哲学者に大きな影響を与えました。本書では、時間がどのように意識の中で成立するのかを徹底的に探究しています。

