本書(*)は、明治時代の思想家・内村鑑三が1894年(明治27年)に行ったキリスト教夏期学校での講演をもとにした小冊子です。この講話では、「私たちは死後に何をこの世に残すことができるか」というテーマのもと、財産や事業、文学や教育など様々な“遺物”を挙げながら、最終的に「勇ましく高尚な生涯」こそが誰にでも遺せる最も価値ある贈り物であると説きます。
自らの生き方を振り返り、実例を交えながら語る語り口は、聞き手・読み手に自分の人生のあり方を深く問い直させます。物質的な成功や世間的な名声よりも、信念を貫いた誠実な生き方が人々に影響を与えると説くその内容は、時代を超えて読む者に静かな感動と勇気を与えます。
*出典:青空文庫