本書(*)は、明治期の思想家・新渡戸稲造が教育とは何かを深く問い直し、その真の目的を五つの観点から論じた講演録です。
彼はまず「職業のための教育」が世の主流である現状を指摘しつつも、それだけでは教育の本質を捉えきれないと説きます。さらに「道楽(楽しみ)」や「装飾(教養)」、「真理の探究」そして「人格の完成」こそが教育の本当の目的であるとし、特に人間を社会的存在として円満に育てることが教育の核心だと主張します。
文章は軽妙ながら、現代にも通じる深い示唆を含み、職業訓練に偏りがちな教育への警鐘ともなっています。全体を通して、人格を育む教育の重要性を情熱的に訴えています。
*出典:青空文庫